アルの晩年
アルの古い写真を出しっぱなしにしておいたら、長女が見ながら言いました。
「アルって、最初の頃はけっこう暗かったんだね。」
確かに、私も、アルってこんなだったっけ?と思いながら見た写真が何枚もありました。
アルが来た当時は、子供たちや自分自身のことで、私も忙しくて
アルの表情を見ていたようで、実はよく見ていなかったのでした。
6月に家に来て、やっと毛が生えそろった夏の終わりごろには
こんな表情もしてくれましたが
こんな顔もしていたのです。
この顔のような晩年の頃のイメージが強くて
ずっと落ち着いた表情だったと思っていたのですが
最初の頃は、暗い、荒れた表情をすることもあったようです。
アルがいてくれた10年間は、傷ついた家族が回復していく最初の10年間でもありました。
アルが来たからと言って、子供たちが短期間で奇跡的に学校へ行くようになったわけではありませんが
アルがいてくれたおかげで、私達はなんとなく希望を失わずに済んだのでした。
家族の誰かが旅行に行っただけで下痢をするような繊細なところもあった子だったので
家の中で誰かが苦しむのを見るのは、もしかしたらアルにとっても辛いことだったのではないかなあ
と思えるようになったのは、アルが去って行ってからです。
荒れる子供達と、介護が必要な両親を抱えて、私もある意味自分を見失っていました。
家族の誰かしらのイライラが募り、激しい口論になったり、泣いたり、怒ったりすることもたびたびでした。
そんな時、アルはどうしていたんだろう?
思い出せません。確かにいたのに、どこにいたのか、何をしてたのか・・・
多分、そっと部屋の外に出て行って、雰囲気が落ち着いたら、戻って来ていたのでしょう。
よく玄関で横になっていましたから。
そういう時には、私達は自分のことで精一杯で、周りを見る余裕もありませんでした。
でも、アルを見ると私達は少しだけ冷静になれました。
今でも、感心するのは、あれだけ荒れていた子供たちも、アルに当たり散らしたりはしなかったことです。
ケンカをしている時には、そっといなくなりましたが、悲しんでいる人には寄り添うような子でした。
家族が明るい雰囲気になると、いつのまにかリビングにいて、横になっていました。
今思うと、子供たちがやたらアルに抱きついたのも、それぞれがアルの体温と毛並みで安心できたからかもしれません。
アルは抱きつかれて嫌な顔をしながらも、逃げたり、抵抗するようなことはしませんでした。
なんだか、諦めているようにも見えました。
Eggiさんのブログ(こちらも)を読むようになってから、そんなことがどれだけアルの負担になっていただろう
と思うと、アルの価値に気付かなかったことよりも、もっと申し訳ない気持ちになっていました。
でも、写真を見直して、アルの暗さに気付き、前の記事でEggiさんが下さったコメントを読んで
感じ方がガラッと変わりました。
アルもまた、長い回復の過程で、私達を必要としてくれたのではないだろうか。
>アル君は、厳しい訓練にも耐え抜けるほど強い性格だったから、心が壊れることも無く
>我慢することに慣らされたワンコさんでしょうから
Eggiさんはアルについてこんな風におっしゃって下さいました。
私達は家に来た当時のアルの様子を、酷い捨てられ方をしたせいだ、と思っていました。
でも、ただそれだけではなくて、それまでの厳しい扱い方の結果も加わっているとしたら
だから、来た当時から抜群のお利口さんだったのだとしたら、
アルの暗い表情がしばらく(数年)続いたことにも頷けます。
私達はワンコについての知識はほとんど持ち合わせていませんでしたが
アルに厳しく何かを要求することはありませんでした。
ただ側にいて、時々一緒に遊び、楽しそうにしているところを眺められればよかったのです。
オビディエンスもアジリティも知りませんでした。警察犬訓練も![]()
アルにとっては、もしかしたら、それが一番良かったのではないかな、と思います。
アルも私達も、無意識に相手の傷つきを知っていたのかもしれません。
アルと暮らした年月は、傷ついた家族と傷ついたワンコが寄り添う
リハビリの過程だったのかもしれません。
今となっては、確かめようもありませんが、そうであれば
私達はただ、アルから一方的に与えられていたのではなく
お互いに与えあっていたのだ、と考えることができます。
そして、その方が、世界がずっと美しく感じられるような気がします。
アルの晩年の様子と、レオンが来たころのことを書こうと思っていたのですが、大幅に変わってしまいました。
でも、せっかく写真を用意したので貼り付けておきます。
アルは体力のあるうちは、軽くレオンの相手をしていました。
最初は幼いレオンが何をしても怒りませんでした。
アルがなんだか妙な風に首を傾げて歩いているので、反対側を見たら、
レオンがアルの耳に必死に噛みついてぶら下がっているのを見つけたこともありました。
アルは派手なイアリングをつけている、といった感じで全く気にしていませんでした。
アルが丸くなって寝ているとレオンはその輪の中に埋まって眠っていました。
レオンが見えないので名前を呼ぶと、金色の毛並みの中から
真っ黒なレオンが、大きな目と耳でちょこんと出てきたところは本当に可愛かったです。



































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